「一人暮らしの風水」

契約をスムーズに運ぶには

 

契約トラブルになる前に

さていよいよ、なんとか妥協できそうな物件を見つけたとします。
その物件の賃貸契約を結ぶことになりますが、ここに思わぬ落とし穴が待っている場合があります。
せっかくあなたがこの物件にしようと決めても、相手が貸してくれない、という場合があるのです。
じつは、ここまで来てしまうと、せっかく見つけた物件であっても契約に漕ぎ着けることは難しいでしょう。
ここまで来る前に根回しが必要なので、その話をしましょう。断られてしまってからでは、この物件に関してはもう遅いのです。

基本的に、部屋の賃貸契約については、お金を払えば使えるものだ、とは思わないことです。
ほとんどの貸主(大家)が、「この部屋は汚されたら困るから、子供のいない若夫婦に」とか「家賃を踏み倒されたり、騒いで近所に迷惑をかけられたり、事件を起こされると困るので、出来れば公務員か一部上場企業の社員に」とか、あらかじめ決めていることが多いのです。
これは、賃貸用に建築したアパートでは比較的ゆるやかなのですが、投資の物件や一時的な留守宅を、大手不動産チェーンのリロケーションシステムで運営している物件は、非常にうるさいようです。
入居者の条件から契約時の必要書類まで、これでもか、というほどきっちり決まっています。

これは、街の不動産屋さんに頼む場合は「細かいことはお任せしますから、良い入居者を入れて下さい」という管理のしかたが多いのに対して、大手不動産チェーンでは審査項目、必要書類、記入のしかたなどがキッチリ決まっていて、マニュアルを少しでもそれると本社で通らないからです。
担当者がいくら親切な人でも、個人的裁量の余地は、ほとんど残されていないと言っていいでしょう。


自分を客観的に値踏みしてみる

ちょっと嫌なタイトルになりましたが、このくらいの心構えでいないと、一人で部屋を借りてきちんとやっていくことはできません。
すべての人が、頼りになる親兄弟があって、しっかりした仕事と安定した収入のある方ばかりではないでしょう。
このサイトをご覧の方の中には、親と喧嘩別れして家を出ようという方もあれば、リストラされて高い家賃が払えなくなったので、引っ越しを考えている方もあるでしょう。

いざ賃貸契約で困る人に一番多いケースは、大学に入る時に親に借りてもらったアパートから引っ越ししようという時です。
その時点で、ちゃんと大手企業にでも勤めていればいいのですが、フリーのアルバイターで親とも気まずくなっていたりした場合、新築のオートロックの小綺麗なマンションに入居しようというのは、かなり難しくなります。
不動産の入居審査は、入社試験の面接みたいなものだと認識して下さい。服装も、別にリクルートルックで行く必要はありませんが、あまりに奇抜なもの、軽く見られるようなものは避けて下さい。
そして仕事とか家族のことを聞かれた時に、「そんなこと、関係ないだろ。ちゃんと家賃さえ払えば」という態度を取ってはいけません。はっきり、自分はこういう者だと具体的に答えることです。

その前に自分自身、あなたの側の条件を整理しておきます。
まず希望家賃、部屋の広さ、構造など……かかるお金の総額は関東近県ですと、家賃のだいたい5、6倍必要なケースが多いようです。関西だと昔は敷金が非常に高かったのですが(20倍ほど)現在はわかりません。
あなた自身(契約者)の情報……勤務先、役職、年齢、家族構成、年収など。住民票に記載された内容と違っていないことです。
連帯保証人の情報……契約者との関係、年収、勤務先、役職、家族構成。

これだけのことがはっきり提示できないと、契約は成立しません。年収などは源泉徴収票がいらないのなら、少し多めに書くに越したことはないでしょう。


連帯保証人の問題

この中で、一番ひっかかるのが連帯保証人かもしれません。不動産屋によっては、まず最初に「保証人はどなたが立たれますか」と聞く業者もあります。それによって、紹介できる物件が異なってくるからです。

こういう場合、保証人のランクは、一番いいのが、親族でしっかりした仕事と年収のある人。次が社会的な肩書はどうでも、とにかく親族であること。次が、他人で社会的地位と収入のある人となるようです。
特に他人が保証人に立つ場合には、印鑑証明、源泉徴収票、住民登録票、保険証の写しだの、保証人確約書だの、ものすごくいろんな書類を取るようです。
とにかく、たとえたいした年収がなくとも(本当に無職と書いたらちょっと困ると思いますが)この場合の保証人は、親族の方が強いのです。
これがもう少し年齢が上がったり、家賃の高い高級マンションになると、社会的なステータスが関係してくる場合がありますが、若い人の連帯保証人は、北海道と九州などに離れていても、血のつながった人の方が有利です。

これは何故か、と不動産屋さんに直接尋ねました。
そしたら、住居というのは、もし万一何かあった場合、・・・病気や事故で動けなくなるとか失踪するとか……金銭的な保証は誰であろうと保証人に立った以上、全く同じように取ることには変わりありませんが、残った荷物などを捨てていいのか引き取るのか、警察の届けはどうするのか、親族でなければ決められないことが多いからだそうです。小さな子供でも残された場合は、他人ではその場をどうするか、とっさに決定することはできないでしょう。

ですから、保証人は偉い人でなくとも、お金持ちでなくとも構いませんから、親兄弟、叔父叔母、従兄弟、目下でも構いませんから、いれば親族に頼むに越したことはないでしょう。
もしどうしてもそれが出来なくて他人に頼む場合は、あらかじめ不動産屋に頼んでおくしかないでしょう。
「身内に保障人になれる人がいなくてこれこれこういう人に頼むが、それで契約できるところを探してくれ」と伝えてください。
それでフリーのアルバイターだったりしたら、業者によっては掌を返したように相手にしなくなるところもありますので、その時は潔く諦めて他の業者を探しましょう。
駅ビルの中で近代的なテナントを構えている大手のチエーンではなく、「街の不動産屋のオジサン、オバサン」を頼れば希望はあります。
同じ路線でも、一駅違えば不動産屋のカラーはかなり異なるようで、いかにもホワイトカラー然とした地域を避ければ大丈夫です。
それでも、あなた自身が誠実な態度で(私は肩書のない者で、たぶん信用されないと思いますが、本当はきちんとした人間ですから迷惑はかけません)という印象を与えることが必要です。

「こちらは契約の時に、どんな書類が必要ですか。私は収入は安定していますが、アルバイトなので源泉徴収票や保険証など証明するものがないのです。保証人はコレコレこうです」と最初に率直に尋ねることです。
そうすれば、「あんたなんかに貸せる物件はないね」という態度になるのか、「そういう条件では難しいですね。でもいちおう探してみましょうか」というか、「ああ、別に大丈夫だよ。家賃さえきちんと払って人に迷惑かけなければいいんだからね」という気楽なオッサン(オバサン)なのか分かります。

いかがですか。ひょっとしたら最初に考えていたことと、問題の重要性の順番がまるっきり逆だった人がいらっしゃるのではありませんか。
本当に、国民総背番号制も間近ではないかと思うくらい、何でも証明書、契約書の社会構造もなってきました。
私なぞは、こういう風潮をいちばんもろに被る立場なので、私のいうことを聞いておいて損はありません。
何年か前、十五年住んだアパートが手狭になったので、ファミリータイプのマンションに引っ越ししようとしたら、「母子家庭だから」という理由で断られました。
私自身は小さな株式会社で勤続10年の取締役、息子は23才で「あの」セガ・エンタープライゼスの社員でした。
この時は扱った不動産屋さんもあまりのことに驚いて、「息子さんが立派な社会人なんだから、母子家庭というのはおかしいじゃないか」と怒っていましたが、私自身は慣れっこなので「ああ、またか」という程度です。

以上、この項目はあまり関係のない方は関係なかったかも知れませんが、不動産契約では途方に暮れる若い方があまりに多く、それは知識不足から来ることが多いので、つい余計なことまで述べてしまいました。
私は長いものには巻かれなさいと言っているのではなく、一人暮らしの第一歩を踏み出すにあたって、避けて通れない社会構造は知っておくしかないと言っているのです。
あなた自身は、豊かな才能と感受性に溢れた、将来のある人間に違いないでしょう。
しかし、不動産の賃貸契約に関しては、肩書、証明できる収入、役所の書類に記載されたことがらだけが関係してくる世界なのです。もう少し皮肉な言い方をすれば、人間的なことはどうでもいいから、安全で無難な人が歓迎され、あまりに個性的で変わったことをしそうな人は敬遠されます。才能に溢れたクリエイテイブな人より、公務員やテレビでコマーシャルをやっている企業のサラリーマンが安全なのです。これは仕方のないことでしょう。クレジットカードと同じことです。
不動産契約以外にも、社会のいろんなシーンで、信じられないようなことが数多くあります。スタートの最初の時点でつまづかないよう、頑張ってください。


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