観相術入門:目次

〜相法極意修身録〜その2



食の多少と寿夭窮楽

・食、分限より少なき者は、相貌悪しくとも吉なり。相応の福分あって短命なし。なお老年吉なり。

この一文は、自分が天から割り当てられたぶんよりも少ない食事で満足していれば、人相が悪くても次第に幸運に恵まれる。特に、若死にすることもなく、年を取るに従って幸福になる、ということです。
寿夭窮楽ですから、「寿夭」=「長寿と夭折(若死)」、「窮楽」=「窮乏と安楽」です。食の多少=「過多か控え目か」が、長寿と若死を分け、また生活ぶりも窮乏か安楽かを左右する、ということです。

この話は単純な食事量のことにも当てはまりますが、生活全般のことと受け止めたほうが、よりしっくりきます。
俗に腹八分目と言いますが、欲張りすぎず何事も控え目に、虚勢や見栄を張らずに天に感謝しながら贅に溺れることなく地に足をつけて日常を送ろう、ということです。

たまに大儲けしたからと言って、六本木ヒルズの生活に憧れてしまったりすると、塀の内外を往復することにもなりかねません。まあそういう人々は、波乱の多い人生の波を持っているわけですから、それがいけないというわけではありません。
塀の内側で学ぶことも多いでしょうし、それなりに面白い人生だとは思いますが、一般の人が範とすべき生き方とは少し違う、ということです。

筆者は贅沢がいけないとは、別に思いません。何事も経験が必要ですし、自分の日常とは違う世界の見聞を広めるのは悪いことではありません。
しかし面白いことに、南北翁はこの本の別の章で、身分の低い者が高位の者と交わると運気を落とす、と述べています。これに関しては別項に譲りますが、それに続いて、美食は高位の人の食事であり、粗食は一般庶民の食事なので、美食を好む者は運気を落とす、ということも述べています。

つまり、グルメは運気を落とす元であり、運気を上げたければ粗食にしなさい、ということです。
これについても補足しておきますが、現代では粗食や美食の概念が少し違うのではないかと思います。昔はイワシと鯛とどっちが値段が高くて貴人の食事か、という区別は分かりやすかったものです。しかし、イワシのほうが粗食ではあっても別に質の悪い食事ではないのは、すぐに分かるでしょう。

落語にも「目黒のサンマ」のような話もありますし、安くて美味しいものは沢山あります。ただ現代で筆者が一番気になるのは、美味しい高価な食材かどうかではなく、まともなものかどうか、ということです。まともな食事の為にお金や時間をかけるのは必要なことですが、美食や珍しい食材を追い求める必要はないと思います。

また、食を控え目にするのが良い、というのは、あくまでもその人の生活の範囲内での腹八分目、という話であって、一律に量が決まっているわけではありません。

・尤も左に記すところは、常に身を多くつかわざる人をもって言う。身を多く使う人はその働きに応じて食の多少あり。その体の大小、強弱によって、食の分限あるべし。然れども、若年にして未だ家を治めざる者は食を論ぜず。尚而、若年といえども、いま家を治めいる者は悉く、食の多少によってその吉凶あるべし。


なかなか面白いことを書いてあります。簡単にいうと、肉体労働をする人は、無理に食を控えなくても、必要に応じて沢山食べても害はない。適当な食事量は、体の大小や運動量に応じて決まる、と書いてあります。

次に書いてあるのは、年が若くて家を治めていない者は、食事量を論ずる必要はない。しかし若くても一家の主として家を治める立場の者は、食の多少によって吉凶が別れる、ということです。
これはなかなか面白い一節です。

肉体労働をする者が多目に食べても差し支えない、体の大きさや運動量に応じて食事量が決まるというのは自然な事です。たぶん年齢も関係ありでしょう。
しかし、家を治める立場かどうかで、食事量が吉凶に関係してくる、というのは、なかなか新鮮です。よく考えれば、一家を担う責任ある立場の人間は、常に油断せずに身を修めなければならない、というのは当たり前のことではないでしょうか。若ければ食欲も旺盛で沢山食べられる筈ですが、一家を治めるという立場には、いわば武家の嗜みのような心がけが必要です。
満腹で動けなくなるまで食べるとか、酔っ払って前後不覚になるのは、責任ある立場の者にはご法度で、それには年齢は関係ない筈です。

まだまだいろんなことが書いてあるのですが、今回は腹八分目を守れば、運勢も安定するということ。その腹八分目というのは、単に食物の量のことだけではなく、生活全般に及ぶ、というお話です。
少し話は違うのですが、本当に運勢が悪い時には、断食をすると良い、という説があります。これはいちおう一つの方法ではあるのですが、また違う種類の話なので今回は控えます。
この本には、食の話に留まらず、まだまだ面白い開運法が書いてありますので、おいおい紹介してゆきます。ご自分でお読みになりたい方は、手に入りにくくなっていますが、できるだけ現代文よりも原著をお勧めします。



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