観相術入門:目次

〜相法極意修身録〜その6


身分の低い者が身分の高い者と親しくすると

:我れ発達の相ありといえども、未だ貧にして事をなさず。また我れ商人といえども常に交わるところ、富家はもちろん堂上方に交わらざるところなし。発達の相ありといえども未だ時を得ず。

:たとえ発達の相あるとも、堂上に近く交わる者は、生涯、発達なし。下賤にしてデン常備とに交わること、大いに徳を損す、恐るべき事なり。今一度交わる時は我が生涯の頂上なり。



出だしはまず、質問者が自分は身分の高い人と沢山の交際があり、発達する相もあるのに、ちっともうまくいきません、と尋ねています。
それに対しての南北翁の回答は、かなり常識はずれのように見えます。

一般的には誰でも、身分の低い者よりも高位高官と付き合うほうがラッキーなのではないか、と思ってしまいます。身分の高い人と交際があれば、自分にもツキが回ってきてそのようになれるのではないか、運が開けてくるのではないか、と誰でも期待するでしょう。

しかし南北翁の回答をよく読んでみると、結局はその人次第で、もし高位高官であっても旧交があったりした場合は差支えないので、誠意をもって付き合えばよい、とも書いてあります。
世間にはよくある例ですが、自分はどこそこの偉い人と付き合いがあるのだ、と自慢する人があります。甚だしい場合は、芸能人と付き合いがあるのをやたらに吹聴する人がいます。芸能人が偉い訳でもなく、むしろ危険信号ではないか、という気がしますが…まあ人気商売ですから、大した知り合いでなくても、友達だ、と吹聴されても懸命に否定はしないと思いますが。
こうして、有名人には一度しか会ったことのない「親しい友人」が無数に居て、あんまりパッとしない人には友人が少ない、という状態になってしまいます。



:人はその交わるところによる、と言えり。われ高位に交わるとも発達ならざるのことわりあるまじ

:心は方円の器にしたがう。よろしき人に交われば自らよろしくなる、また高官に交わる時は心自ら高官のごとくなり自然と高ぶる。商人として心高官のごとくなれば、その業を勤むることあたわず。およそ乱世は知らず、治世において、我が業をおろそかにして高官に交わり発達あるの理なし。然れども高位に使えて身を治めんと欲するものはその限りにあらず。



南北翁の回答が期待はずれだったので、質問者は反論しています。
なるほど、朱に交われば赤くなる、の譬えもありますし、疑問が湧くのは当然でしょう。しかしここでは、商人が高位高官と付き合うと、偉ぶって頭が高くなるので、仕事に差し支えるだろう、と書いてあります。別に高位高官だから、いつも威張っているわけではないと思います。しかし、有名人や高位の人と付き合いがあることを意識しすぎたり吹聴する人の、その心根はやはり、好ましいものではないでしょう。
ハングリー精神おおいに結構、いつか出世して、あのような身分の高い人達と対等に付き合えるようになってやろう、という気持ちやパワーは、大切なものだと思います。
しかしそれも、内容によりけりです。誰それが身分が高いお金持ちである、という結果だけを見ていると、今の自分がつまらなくなってしまって、自然と仕事にも身が入らなくなってしまいます。

本当に出世する人は、無暗に上ばかり見てはいません。まして他人の生活を羨んだり憧れたりはしていません。足元をしっかり固めて、一歩づつ着実に上ってゆきます。今の自分を否定してしまったら、それ以上になれようはずがありません。

原著には書いてないことですが、しかしそれでも、付き合う相手は選んだほうが良いと申し上げておきます。
特に今現在、底辺だと思っている人は、今の立場に対して不平不満ばかり言っている人と付き合うのは、よくありません。
仕事に貴賤はありませんし、必ずそれなりの役割があります。しかし、その仕事に携わる人の質には違いがあります。今の仕事に誠実に、しかも向上心を持って常に努力を惜しまない人を友人にしましょう。そんな人は周囲にはなかなか居ません。むしろ変わり者で付き合いにくい人でしょう。ですから、友達は少なくても、居なくても構わないのです。不平不満の渦巻く底辺で、一緒に上司の悪口や世の中の愚痴を言ったりする相手は、真の友達ではありません。

余りにありきたりの例ですが、豊臣秀吉が一介の草履取りからのし上がった逸話を思い出して下さい。伝説でもなんでも構わないので、今の自分の仕事を大切に、十二分にできない人に、もっと重要な大きな仕事は回ってはきません。

原著の一文だけを見るとよく分からない部分があるので、少し話がそれましたが、これは処世術とか人生訓の類ではなく、言ってみれば常識のようなものです。最初は、え?何で身分の高い人と付き合っちゃいけないの?反対じゃん、と思った方も、真の常識に即して考えれば、ご理解いただけるのではないでしょうか。


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