風水学講座:目次

枕の向きを考える



今回は眠る時の枕の向きを考えてみます。
この問題は「方位」だけに限ってみると、本命○○の人はどっちがいいなど、いろんな説が飛び交っているので、ある程度はご存知の方も多いと思います。
ところが、それをちゃんと聞いてみると、中にはかなり無理なことをなさっている場合もあるようです。
眠る枕の向きを決めるのも、立派な家相学、環境学の一部であって、いわゆる占いではありません。何度も言うように、家相というのは、いろんな条件の中で、うまくバランスを取ってゆくことが一番大切です。

一部分の知識を覚えることは誰でも出来ますが、実際にそれを使えるかというとまた別問題で、その重要度のバランスの取り方が経験の差です。ひいてはプロとアマの違いでもあります。
今回は、単に「どっちを向いて眠るのが吉か」という特定の知識を覚えるのではなく、この問題を材料にしながら、大きな問題の中の一部、総論と各論のバランスの取り方を考えてゆく、という意味もあります。

まず、自分の本命星とか、相生・相克表などはいったん忘れましょう。先入観を持っていると、判断結果にもバイアスがかってしまいます。枕の向きに関しては、まず万人共通の原則を抑えることが第一で、本命星などの問題は補足程度です。判断基準としては、次の通りの順序になります。

1、寝室として相応しい部屋を選定する
2、部屋の構造に適ったベッド(布団)の位置を決める
3、玄関の向きと枕の位置を考えあわせる
4、頭寒足熱を旨とする
5、自分の生年十二支や本命星を考えあわせる



寝室として相応しい部屋

まずこれが第一です。十分な睡眠は、体力と健康と運勢の源です。住スペースの中で、一番優先すべきは、しっかりした寝室を取れるか否かです。寝室の決め方にはいろんな考えがあると思いますし、なるべく沢山、朝日の入る部屋が良い、という方もあるようです。しかしこれは、人間の本能とはまるで逆です。
ぐっすり寝ている人に光を当てますと、無意識に顔を覆ったり、布団にもぐったりするものです。陽が落ちると同時に眠りにつき、陽が上ると同時に活動する、という生活をしている人は別ですが、社会生活に縛られる以上、あまり朝早くから光線が入る家は、睡眠不足になってしまいます。

人間は、戸を隔てて、自分の周囲をしっかりと囲い、安心して眠れる環境を好むものです。光も、ほの明るい程度が最適です。広く明るい寝室は、寝室としてはあまり相応しくありません。
この原則から言うと、南東の角部屋などは一番寝室には向かないということになります。

寝室は狭めの、落ち着ける部屋を選ぶことが大切です。空気が淀むのはよくありませんが、穴倉のような場所のほうが安眠しやすいものです。
特にワンルームの場合は、好む住環境と寝室の条件が一致しない場合も多いので、後述の条件とも考え合わせて、落ち着いて眠る場所が取れるかどうかを、判断基準にすると良いでしょう。


部屋の構造に適ったベッド(布団)の位置

前項と微妙に重なりますが、重ならない部分もあります。前項では何部屋かある中で、寝室に向いた部屋が取れるかどうか、ということですが、狭くてあまり光が差さないので寝室に向いてると思っても、部屋の構造によってはうまくベッドや布団が置けない場合があります。
ベッドには普通、頭の側にヘッドボード(頭板)がついています。足板と両方ついている場合もありますが、ヘッドボードが必要なのは、枕が落っこちるからではなく、やはり頭側をなるべく外界から守ったほうが眠りやすいからです。
ヘッドボードがない場合には、何となくでも頭側を壁につけたり、大きな家具にくっつけたくなります。

最低限、部屋の構造が頭側を守りながら眠る、という目的に合致しないと、良い寝室とは言えません。
布団を敷いた時に、どうしても頭の部分にドアが来たりしない、家族が出入りする通り道になったりしないような、ベッド、布団の位置設定が出来ることが必要です。

この条件はたぶん、長時間、燦々と陽光の降り注ぐような部屋では、壁が少ないので、なかなか満たされないと思います。普通、ある程度の部屋数のあるお宅では、寝室を決めやすいと思います。
しかし、日当たり重視、角部屋だったり、たまには全面ガラス張りで外界の風景を楽しむ、というようなお宅の場合、4部屋も5部屋もあっても、寝室に相応しい部屋が無い、という場合もありますので、住まいを決める時には、寝室を優先して決定することが大事です。


玄関の向きと枕の位置

意外と見逃しがちな条件ですが、「」と「」を間違えないことが大切です。
仏壇や神棚の場合には、不思議なほどはっきりと出るものですが、その神仏にお守りいただいている人間にも、影響があります。

「順」とは、玄関の向きが北向きであれば、枕を北向きにして眠ることです。
「逆」とは、玄関の向きが北向きなのに、南向きで眠ることです。他の方位の場合でも、玄関の向きと眠る向きが逆ですと、逆相になります。

北と南で対立する使い方をしているわけですから、「対冲」となります。玄関というのは社会に向いて開いている場所ですから、社会と対立した暮らし方ということになってしまいます。
玄関が北向きの場合に東向きとか西向きで眠るのは、逆相にはなりません。

ここで注意していただきたいのは、「向き」と「方位」(位置)とは違うということです。
例えば、下の図をご覧下さい。全体の鑑定ではなく「玄関の方位と向き」の説明ですので、玄関部分だけをブルーに色づけしてあります。1図では北玄関で北向きです。2図は南玄関ですが南西向きです。3図では西玄関ですが北西向きです。

1図:北向きの北玄関 2図:南西向きの南玄関 3図:北西向きの西玄関

このように、「向き」と「方位」(位置)は必ずしも一致しません。ただここで着目すべきことは、向きと方位の一致しない玄関は、そのどれもが張り出し玄関であり、玄関の持つ凶意が割合に出にくくなっているということです。1図では玄関の持つ弱さがそのまま出てしまう傾向があるということです。

最近は一戸建てもマンションも、家の中に入り込んだ形の欠け込み玄関が非常に多いのですが、探せば意外と張り出し玄関はあります。ちなみに、2図も3図も、実際に存在する都心の高級物件です。少し加工してあるので分かりづらいですが、よく見ると、細部までこだわった使いやすい設計になっています。
別に風水学を学んで家相にこだわらずとも、玄関のドアを開けて家の中が丸見えになるのは誰しも気持ちの良いものではないので、念入りに設計していれば、玄関は張り出した形で向きを変えたほうが使いやすいということは、誰でもわかると思います。

ちなみに、仏壇と神棚の向きも同じように判断します。単独で方位だけ考えても、家全体の構造や向きとの兼ね合いも考えなければ、片手落ちになってしまうわけです。仏壇、神棚にはまたいろいろと別の問題があるのでここでは触れませんが、住む人が「順」で寝て仏壇・神棚が「逆」であれば、住む人は自分の守り本尊と逆の位置関係になってしまうわけです。好ましくない状態であることはお分かりだと思います。


頭寒足熱をムネとする

いろんなことを考え合わせ、結局どっち側に枕を向けて眠るか、と検討した結果、どうしても南向きになってしまったら、なるべくそれは却下して次善の策を取って下さい。
前記の三つの条件が揃った結果、北枕になれば、それは良い寝室と言えるでしょう。
北枕が良いのは、タイトルの通り、頭寒足熱が一番体に馴染んで、心地よいからです。また、日本では磁極が北にありますので、自然の地磁気の流れとも合致します。

次に良いのは北西です。北西はもともと「頭部」を意味する位置ですし、仏間の第一候補の位置とも言われるように、位の高い方位です。足蹴にするものではありません。
その次に良いのは、東と西です。東は発展の方位で地球の自転の進行方向でもありますので、自然界の原理に逆らわないという意味でも良いものです。
西はもともと休息、休養、憩いの方位ですので、ある程度の年齢になったら西枕も良いものです。

たまに、北枕を縁起の悪い方位と思っている方があるようですが、これに関しては人にも説明できるように、きちんと覚えておいて下さい。

亡くなった方を北枕で寝かせるので、縁起が悪いと思っている方があるようですが、これは完全な間違いです。
北枕というのは、お釈迦様が北枕で涅槃に入られたことに由来します。生前、さしたる仏道修行も出来なかったが、せめて亡くなって西方浄土への往生を願う際には、お釈迦様の涅槃に倣おうという風習で、大変良いことです。
もちろん、亡くなってから慌てて北枕にするよりも、生前から北枕にするほうが良いので、戒名を生前につけることが縁起が良いというのと同じです。
戒名をつけることは、仏弟子になった、ということで、人を殺めたり悪事を働いたりしない、という「戒=いましめ」を守る誓いを立てた、という証拠ですから、早くつければそれだけ縁起も良いのです。もし「えっ?、これ北枕?!」という人があったら、これだけのことをきっちりと説明してあげて下さい。


自分の生年十二支や本命星を考えあわせる

上の四つの条件で、ほとんど言い尽くしていますので、実はこの項目はおまけです。ただ、幾つか候補が残った場合、余裕があれば、自分の個性に応じた方位を選ぶことができます。
あまり相生・相克を考えなくても、自分の生年十二支や本命方位を重要視する、というぐらいの意味です。例えば、子年生まれの人が北方位に足を向けるのは好ましいことでは無いので、子の方位(北)はなるべく大切にしよう、というぐらいの意味です。

このように、いろんな条件を考え合わせると、なかなか理想的な枕の向きが探せないかもしれません。しかし、どっちを向いてもダメ、という場合は、もともとその部屋は住み心地の良くない、あまりそこに長居しても運気がアップする見込みのない部屋だ、という公算が大です。
大きな欠点のない、もともと住みやすい部屋は、スンナリとベッドの位置、枕の向きも決まるものです。
充実した生活と旺盛な活動力や集中力は、たっぷりした気持ちの良い睡眠から始まります。寝室と枕の向きを考え、近視眼的にならずに住まいに総合的な視点を持つことで、あなたの今後の生活設計も、改善の糸口を見つけやすくなることでしょう。

「2012年7月記述」

TOPサイトマップ  関連項目:基礎講座 タオの風水暦 巷談
現在このサイト内にいる人は 人です♪
Copyright (C) TAO AllRightsReserved.
http://www.kumokiri.net/