風水学講座:目次

風水守護神の大研究


四神相応の地とは

良い風水相の第一条件として、「四神相応の地」ということが言われます。
風水をかじっている人は、たぶん聞いたことがあるでしょうが、今回は少しこれを掘り下げてみましょう。

風水が文献中初めて登場するのは、四書五経の中の「書経」ですが、具体的方法が述べられているのは『営造宅経』という書物です。そこに風水のまず大前提として、「四神相応の地」ということが挙げられています。


「経」が紡ぐ思想

ここに「経」という文字が出てきたので、風水は何か宗教に関係があるのか、と疑問を持たれる方がいらっしゃるかも知れないので、書き添えておきます。

「経」というのは、本来は織物の横糸をつなげてゆく為の「縦糸」の意味です。
地図でも東経何度、北緯何度という言い方をするように、横のものに対する縦、左右に対する前後の意味を表します。
そこから転じて、学問、思想、哲学をまとめて論旨を推し進めていくための、「すじみち」「体系」のことを「経」と言います。宗教の専売特許ではありません。

『営造宅経』は筆者の手元に現物がないので、引用の引用になりますが、これには、四神相応の地についてはこうあります。

「人宅左(東)に流水ある、これを青龍という。右(西)に長道ある。これを白虎という。前(南)に汗地(湿地)ある。これを朱雀という。後(北)に丘陵ある。これを玄武という。すなわち最貴の地にして……」


四神のルーツ

四神の説明を少ししましょう。
天上には四方位それぞれに、その性質に応じた四種類の守り神があるといわれています。
地上においても、土地家屋が四神の力を十二分に発揮できるような構造になっていれば、家運が隆盛し、住んでいる人も幸福になれる、というわけです。

じつはこの考え方の根本には、仏教、儒教などをルーツとする、深い人生哲学があります。
われわれ人間の存在は、決してそれのみで成立するわけではなく、天上の神霊世界のミニチュアのようなものだという、一種の諦念にも近い思想があるのです。

まずこれを理解するには、宇宙の構成要素を頭に入れておく必要があります。
仏教世界では、宇宙の構成を次のように分類しています。

仏(ほとけ) 悟りの世界 成仏を遂げた世界
菩薩(ぼさつ) 仏の代理で教えを広める世界
縁覚(えんがく) 師なくして独力で真理を悟る世界
声聞(しょうもん) 師について悟りを得る世界
天(てん) 迷いの世界 色界、無色界、六欲天など能力によって位がある神の世界
人(にん) 日々の営みによって生きてゆく人間世界
修羅(しゅら) 海底にある神の世界だが、常に争っているため人間以下とされる
畜生(ちくしょう) 悪業の結果、禽獣の姿で生まれ苦しむ世界
餓鬼(がき) 悪業の結果、亡者が落ちる、飲食に苦しむ世界
地獄(じごく) 悪業の結果落ちる、一番下の世界。いろいろ呵責の種類がある。

上の四界は悟りの世界、後の六界は迷界です。特に下の四界は四悪道といいます。
しかし、神の世界も人間の世界も、地獄界、畜生界の住人と同じ、迷いの世界に入ってしまうのです。

これは意外に思われる方が多いでしょう。人間はともかく、神様は絶対で、迷ったり、死んだりすることはないと思っていたのに。

これを俗に、六道輪廻といいます。
輪廻転生があるということは、寿命があるということです。
神の世界もわれわれ人間と同じように、行いによって位が上がったり下がったり、悪いことをして滅びたりする可能性があるのです。

早くいえば、神の世界というのは、人間界よりも少し環境の良い、神通力が自在に使える、暮し向きの良い場所に住んでいるだけで、基本的には天上界に住んでいる人間というだけの話なのです。

ここから天人合一理論というものが導き出されます。
人間世界の動き、事件は、天空の神霊世界の動きを反映したものであり、人間社会で起こっていることは、神霊世界でも同時に起こっているのです。これが「天人合一」(てんにんごういつ)です。もっとも時間の単位は違いますが。

古代中国人はこの思想を背景として、天に位置する星、神霊の世界から人間世界の動きを類推しようと試みました。
星座の名前というのは、たんに星の並びから何か物の形を連想した、というわけではなく、神霊世界と人間社会をつなぐ細い掛け橋、神霊世界の様相を垣間見るための、貴重なヒントだったのです。

風水の根本思想とは何も、私達の暮らし向きや、東に行くか西に行くかという、小さなことばかり問題にする、単純な占いの類ではないのです。
大きくは天下国家のありかたを論じ、小さくはその現実的実践法を生きた人間、過去の人間にあてはめて、個人のよりよい生き方を模索していこうという、スケール大きくも小さくも応用できるものなのです。
社会構造が変わらない限り、個人生活も大きな変革は望めないでしょう。中国でも日本でも、風水師が「国士」という立場で迎えられていたのも、当然といえば当然のことなのです。

国士=一国の命運を憂慮し、その優れた能力でもって、国家社会のために尽くす人物。
このコーナーでも「天の巻・第一章、占い業界の昨日、今日、明日」で、易断をもって国家の大事を手がけた人物として、高嶋嘉右衛門を上げています。

少し観念的になりましたが、この、天界から人間世界に影響を与え続ける方位の守護神のことを、詳しく述べましょう。


四神の世界・東の青龍

四神は、その多くは星座の形と結びついたものですが、日本でも中国でも多くの図画や名称に残っています。

まず、東の青龍というのは、みなさんよくご存じの龍神のことですが、実は龍神にはいろいろありますので、特筆しておきます。
日本列島はその形からして龍になぞらえられることが多く、龍神の支配する国といわれていますので、このことは是非覚えておいてください。

龍神には白竜、青龍、金龍、黒龍といろいろあり、それぞれ働きが違います。中には災いをもたらす龍神もありますので、龍神なら何でも良いというわけではありません。

ここでも、「龍」でなく「龍神」という言葉を使いました。「神」というのは、漢語では本来は「とおる」「ふるう」という意があります。ここでは「人知ではかり知れない霊妙不可思議な働き」とでも定義しておいて下さい。

日本が豊かで清浄な水に恵まれた国であること、またそのせいで発展を遂げてきたことは間違いのない事実です。この水の性質を表すのが、青龍です。
一方、西洋は火龍の支配下に入る国が多く、黒龍はおおむね火龍です。俗に倶利伽羅龍といわれる、剣に巻き付いた形で表現されます。

昨今世間を騒がせている新興宗教も、この火龍の社会に属し、あの団体のシンボルマークの梵字は真言密教のものと一致しますが、この問題は風水からは少し外れますので、別のコーナーに回します。
とにかく、東の方位の性質である、発展、驚き、音響、地震、電気などの性質をシンボル化したのが青龍です。


西の白虎

西の白虎神というのは、現在のところ星座の形と五行の色以外には文献が少ないのですが、西には長く伸びる道があるのが吉相とされるところから、「虎は千里行って千里帰る」という諺を思い出していただくのが良いでしょう。

少々こじつけ気味ですが、東洋では龍と虎が守り神の最右翼として登場することが多いようです。
会津の「白虎隊」も年齢によって「白虎隊」「朱雀隊」「青龍隊」「玄武隊」と分かれています。

この、西へ長く伸びる道という象意ですが、じっさい日本でも、一つの都市があると、町、特に歓楽街は西へ西へと伸びて行く傾向があります。
実はこれは、東からぐるりと回ると結局西へ戻るということでもあり、文化も人間の生活も、東から西へ、西から東へと伸び、発展し、また帰結するのが自然の姿なのです。

そのため、家屋の形も、東西に長い長方形が大吉とされています。
人間の一生に例えても、東の騒がしい発展の象意と、西に長く伸びる平和な道のバランスが取れてこそ、意義ある一生が約束されると言って良いでしょう。


北の玄武

北の玄武という神は皆さんあまり馴染みがないでしょうが、これは時代によって、少し表される姿が違います。
胴体が亀で頭が龍になったもの、または亀に蛇が巻きついた姿のものもあります。

特に、亀と蛇が絡み合った形のものは、宇宙の性的結合を象徴するものとされています。
北は季節でいえば冬至に該当するのですが、この時期に、陰陽の宇宙的結合があって、世界が再生されると考えられたところから来ています。


南の朱雀

南の朱雀は空想上の火の鳥とでもいうべき霊鳥です。
頭に冠をいただき、するどい爪、嘴、美しい翼を持った小鳥で、鳳凰と姿が似ており、四霊(麒麟、鳳、亀、龍)の観念との結合からきたものでしょう。
特にこの朱雀は地名に冠されることが多く、「朱雀門」、「朱雀大路」などが有名です。

この、「四神」の条件を満たした場所を「四神相応の地」といい、自然条件を人間の生活にうまく取り入れていくという点では、最高のものとされています。
建築学的に見ても、北方に山があって高いのは北風を防ぎ、東に河川があり、南の通風、採光が良いのは、自然条件からして理想的なものです。

しかし一つ覚えておいて欲しいことは、本来風水とは、先祖の墓をどのような場所に作るのが良いのか、という墓相学から発生していることです。
これは、一族の安泰と繁栄は、先祖とその守護神の祭祀がきちんとなされていることからはじまる、という考え方からきています。やはり、彼岸と此岸との密接な係わりが見られます。
墓が陰気な暗い場所に押しやられていたり、汚れたり壊れたりして粗末になっていては、先祖の生まれ変わりである子孫の繁栄はあり得ない、という考え方が根本にあります。

風水では、亡くなった人の住まい、つまり墓のことを「陰宅」といい、生きている人の住まいを「陽宅」と言い、どちらも同じように重要なこととされています。
現代の日本で全く同じように、この陰宅風水、陽宅風水を実践するのは難しいことでしょう。しかし、知識だけでも蓄えておいて頂ければ、あなたの風水の知識も、いっそう幅が増し、応用が利くようになるでしょう。


タオの風水学教室TOPサイトマップ  関連項目:ビギナーの風水学 風水巷談
現在このサイト内にいる人は 人です♪
Copyright (C) TAO AllRightsReserved.
http://www.kumokiri.net/