風水学講座:目次

風水学における黄金比とは


風水関係の講座や鑑定をしていて、時々受ける質問に、「長方形が吉だそうですが、タテヨコの比率はどれぐらいなのでしょうか?」というのがあります。
いや、質問をして下さればいいのですが、ほそなが〜〜〜い形状を普通に長方形だと思っておられる方もあって、こちらが慌ててしまうこともあります。
もちろん、当サイトでのやり取りですから、風水学上の住宅の形状に関する話の場合が多く、中には「長方形っていうのだから、普通に違和感のない比率の長方形だよね…」と思われる方も多いと思います。しかし、角が90度の四辺形だと、全部長方形だと思っておられる方もけっこうあるようです。

定義としては間違いではないのかもしれませんが、普通、日本で「うなぎの寝床」というような細長い矩形は、日常生活の中では長方形とは言わず、「帯状」「ベルト状」と言うのではないでしょうか。
こうなってくると、何がバランスがいいのか、個人の感性まかせということになってしまい、甚だあやふやになってきます。それではどこからどこまでを長方形というのか、また風水学的に見て吉なのか凶なのか、考えてみたいと思います。

そうなるともう、この章のタイトルを見て正解は分かった、という方もあるでしょうが、この話題は意外に幅の広い話で、きちんと探ってみると意外に面白いものです。


黄金比って何?

比率に関する話題で真っ先に出てくるのが「黄金比」です。美術やデザインをなさる方は既にご存知だと思いますが、まずこれがどのようなものかを、確認してみましょう。黄金比=黄金率とは、最も美しい、調和の取れた比率と言われ、自然界にも様々な形で存在すると言われています。
一番有名なのは、エジプトのピラミッド、ギリシャのパルテノン神殿、ミロのヴィーナスなど。

黄金比 (Golden proportion)とは、数字で定義を示すと次の通りになります。
1:(1+√5)/2 、1:1.6180339…(無理数なので無限に続きます)

上の数字は厳密な定義ですが、この近似値まで含めて黄金比と言い、整数にすると大雑把に言って約5:8です。もっと簡単にしてしまうと3:2という場合もあります。
身近にあるもので言うと、たぶん今使っている方も多いであろう、パソコンやテレビのモニターのワイド画面、名詞などのタテヨコの比率がこれに当たります。

ハイビジョン放送のアスペクト比は16:9ですが、これは研究の結果、この比率が人間が最も視覚的に臨場感を得やすいということで、取り入れられたものだそうです。経緯はいろいろとあるのですが、映画との互換性も考えて今の比率になったそうです。

先ほどは近似値まで黄金比に含めて考えると述べましたが、それは視覚的にどう感じるかというアバウトな話で、厳密には1:1.6180339…というように、割り切れない数字が黄金比として設定されているのには理由があります。
あまり数学的な説を掘り下げても分かりづらいので、黄金比を説明するのに一番分かりやすい黄金長方形を取り上げます。

左図は正確な黄金比で描かれた黄金長方形です。この長方形から、まず最大の正方形を取ります。そうすると半端な長方形が残りますが、この残った長方形も黄金比で出来ています。ここからまた正方形部分を取ると、また黄金比の長方形が残ります。このようにして次々と正方形を取っていきますが、これは計算上は無限に続きます。この図形は計算上は、無限の正方形と黄金比長方形によって埋め尽くされてゆきます。
実際には内側に向かって図形を無限に作成していくのは無理ですが、逆に、外側に向かって増やしていくと考えることも出来ます。長辺を黄金比の短辺とする長方形を作成していけば、外側に向かって無限に正方形と黄金比長方形が増えてゆくわけです。紙でも折って試してみると分かりますが、他の比率だとこうはなりません。

これは何を意味するかというと、黄金比が最も均整が取れて視覚に心地よく、更に無限の発展性があるということなのだそうです。少し穿った見方かもしれませんが、次から次へと何かを産み出す連続性と発展性があるので、これは無限に自己相似系を生み出せることが生命の源のように感じられて、美意識を刺激することにもつながり、広く好まれるのだ、というような説もあるようです。
他にも黄金比螺旋とか、長い2辺と短い辺の長さの比が黄金比になっている二等辺三角形が五芒星の中に含まれていたりと、黄金比にはいろいろなものがあります。

しかし、このような定説を抜きにして、それではいろんなところにこの黄金比を使いたいかというと、個人的には少し疑問があります。また、発展性とか美意識はまあいいとして、一般的に言われている、黄金比が最も均整が取れていて安定感があるという説には首を傾げてしまいます。

筆者の個人的な感覚ですが、黄金比とされるものは少し細長すぎるように感じられます。モニターのデスクトップにしても、googleのサイドバーを横に表示して、少し狭くなった画面比率が最もバランスが取れていて使いやすく感じるので、常にサイドバーを表示しています。幾つも画面を立ち上げて作業する時には横幅も必要でしょうが、そういう時にはサブモニターを使いますので、この横長のワイド画面をそのままで使うことはしません。どうも横長すぎて気持ちが悪いのです。

一般的な意見にしても、ピラミッドとかパルテノン神殿とか、有名すぎるほど有名な建造物が必ず黄金比の引き合いに出されるというのは、逆にいうとそれしかないのだ、という見方も出来るのではないか、という気がします。

自分の身近にあるもので、一番使いやすくてタテヨコのバランスが取れていると思うものは、紙です。六畳間のバランスもいいと思います。コピー用紙、本、ノート、全て長方形なので、まず、この紙の比率を調べてみました。

考えてみると、規格に沿った紙というのは、A版であろうがB版であろうが、全て半分…半分…また半分と折っていっても、全て同じ比率になります。これは何気ないことのようで、凄いことではないでしょうか。規格はいろいろありますが、代表的なB版(ISO=国際基準)とA版が分かりやすいので、見てみて下さい。

用紙のサイズ
ISO B版
(mm×mm)
A版
(mm×mm)
ISO B0 1000×1414
ISO B1 0707×1000
ISO B2 500×707
ISO B3 353×500
ISO B4 250×353
ISO B5 176×250
ISO B6 125×176
ISO B7 088×125
ISO B8 63×88
ISO B9 44×63
ISO B10 31×44
A0 841×1189
A1 594×841
A2 420×594
A3 297×420
A4 210×297
A5 148×210
A6 105×148
A7 074×105
A8 52×74
A9 37×52
A10 26×37

この形はルート長方形というのだそうで、タテヨコ比率が1:√2=1:1.414になります。A版は19世紀にドイツの物理学者が考え出したのだそうで、面積が1平方メートルのルート長方形をA0にしたのだそうです。
B版は日本の美濃紙を元に、面積が1,5平方メートルのルート長方形をB0としたJIS規格です。上記のISO企画はJISよりも少し小さいのですが、B0の一辺がちょうど1000mmなので比べやすいと思います。

身近に多いのは白銀比

さて前置きが長くなりましたが、この紙のタテヨコの比率(ルート2の長方形)を白銀比、別名を大和比とも言います。黄金比よりも少し控え目なわけですが、実生活上はこの白銀比に近いものが多く使用されているように思います。何となくですが、日本には黄金比よりもこの白銀比を持つものが多いようです。
古来日本人は、あんまりキラキラしたものよりも少し控え目でよく見るとなかなかいい、というものを好む傾向があるようです。黄金比、白銀比があるならいぶし銀比なんかもあっていいと思いますが、青銅比とか第二黄金比なるものもあるようです。しかしこれは後付けの理論であって、どの比率が金でも銀でも青でも赤でもなんでもいいような気がします。要するに、自分やその住む社会にとって一番使いやすく心地よいものが黄金ということで良いので、何も定義にこだわる必要もないのではないかと思います。

国旗なんかも、世界各国サイズも比率もバラバラですが、日章旗は縦:横=7:10で日の丸の直径は縦のサイズの5分の3と決まっています。世界各国の国旗は、大きさはともかく比率もバラバラのようですが、国連やオリンピックでは全部2:3と決まっているそうです。これは便宜上いたし方無いとは思いますが、国旗の成り立ちから言って、横に張り渡したりなびかせるものもあれば旗竿に括りつけるものもあるので、いろんなものがあって当然と思います。

整理しますと次のようになります。比率は無理数なのでコンマ以下は3桁で切り捨てています。


上の図を見れば作り方も分かりますね。白銀比のほうは、正方形の対角線のサイズをそのまま長辺のサイズにすればいいわけです。黄金比のほうは、正方形を半分したものの対角線をそのまま長辺のほうに伸ばせばいいわけです。

日本では古来から、黄金比よりも白銀比や正方形のほうが多く使われているというのが多くの研究者の間でも定説になっています。例えば法隆寺の金堂は四方から見られることを意識してか完全な正方形の建物ですし、一階と二階の比率も黄金比ではなく白銀比です。
最近完成した東京スカイツリーも、全体の高さに応じて、第一展望台が黄金比、第二展望台が白銀比になっているそうです。細かい数字を気にする必要はありませんが、西洋人に比べ、丸顔で背の低い日本人にとっては、黄金比よりも白銀比や大和比のほうが、馴染みやすく落ち着く形なのかもしれません。
名実ともに日本の最高峰として愛されている富士山も、アジア大陸やヨーロッパの山に比べて、なだらかな形状をしているのも、愛される要因の一つではないかと思います。
富士山の場合には縦横の比率がどうなっているのかよりも、この安定感のある左右対称のシルエットが最大の特徴で、何となく長めの長方形よりは四角いものの好きな日本人にはあっているのではないでしょうか。家屋の間取りに六畳、四畳半という取り合わせが多いのも、無理からぬことなのでしょう。
ちょうど手元にあった電子書籍端末が、バッチリ黄金比と白銀比になっていますので見てみて下さい。全体が黄金比、表示部が白銀比になっています。KindleでもKindle fireのほうは縦長の黄金比になっていますが、紙と性質の似たE Inkを使った端末は、白銀比になっているわけです。

山岳画像は上からマッターホルン、エベレスト、アイガー北壁、富士山。電子画面はハメコミ合成。


いろんな風水鑑定をしていて何となく思うのは、何故か高級物件に四角に近いものが多く、ちょっと首を傾げる物件には細長いものが多いような気がします。適度な長方形が吉、真四角は小吉、細長いものは変形がなくても凶なのですが、意外とご存知ない方が多いようです。参考までに幾つか物件を挙げておきます。
あくまでも縦横の比率の話しであって、個別の物件の鑑定ではありませんので、細かい部分は変更して方位の印も表示していませんが、何となく参考に眺めてみて下さい。

四角い部屋 長方形の部屋 細長い部屋

「2013年7月記述」

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