みんなの風水:目次

宝石の性質を考える・その1



女性に関心の深い、宝石のお話です。
風水のほうでもパワーストーン好きな方は多いですが、そういう理由付けなしでも、宝石、貴石にはそれぞれの性質があります。
特別に宝石が好きな人はもちろん、誕生石や何かの記念そのほか、私たちは知らず知らずのうちに、意外に宝石に縁を持っている場合があります。
しかし、気をつけたいのは、宝石にもそれぞれの性質があり、必ずしも、宝石は良いものとばかりは限らないということです。中には下手にタッチしないほうが良いものもあります。
今回、風水学のみならず、いろんな側面から、宝石に関する問題を考えてみましょう。



宝石にまつわるエピソードの数々

世界には古くから、数多くの宝石にまつわるエピソードがあります。宝石なんて、元はと言えば単なる石ころですし、貴金属とダイヤモンドを除けば、色つきの石などは、ほんとに単なるアクセサリーにしかならない、実際的な利用価値は無きに等しいものです。ですが、何故か奇妙に、強く宝石に惹かれる人々が存在します。固有名詞までついて伝統になっているものもあります。文学作品にも、いろんなシーンで登場します。

筆者は実際的なほうなので、現実ではほとんど宝石やパワーストーンには興味はありませんが、何故か小説や映画の中に出てくる、いわくつきの宝石の話には心がときめきます。現実には役に立たないものであっても、強くこだわる人々が存在するのは、なかなか面白いことです。フィクション、ノンフィクション問わず、まずはその一端をご紹介しましょう。


ビルマの竪琴(ルビー)

何度も映画化された、竹山道雄の有名な小説です。
第二次世界大戦の末期、ビルマ(ミャンマー)に駐留する日本軍小隊で斥候を勤める水島上等兵は、ビルマ人の扮装がうまく、ビルマ伝統の竪琴を流麗に弾きこなして、味方への合図としていました。
やがて戦況は悪化し、日本軍の無条件降伏が伝えられますが、敗戦を認めず、三角山に立てこもって頑強に最後の抵抗を続ける小隊があります。水島はその説得の為に、使者として赴くことになりますが、そのまま消息を絶ちます。

水島の所属する小隊の仲間達は、帰国の日も近づく中、収容所で気を揉みながら彼の帰りを待ちますが、そこにある日、水島そっくりのビルマ人の僧侶が現れます。一言も口をきかないので、小隊の人々は必死で呼びかけますが、彼はそのまま立ち去ってしまいます。しかし、数日後、森の中から彼の弾く竪琴の音が流れてきます。その曲は小隊が折に触れ、繰り返し歌っていた日本の唱歌なのでした。

物語は遡り、水島上等兵が三角山での説得に破れて小隊へ戻る時のことです。紆余曲折あって九死に一生を得、やっと帰途に着くことの出来た水島上等兵は、帰る道すがら、戦闘の激しかった場所へと差し掛かります。
そこで目にしたものは、死屍累々と横たわる無数の兵士の屍でした。衝撃を受けた水島は、同胞のなきがらをそのまま打ち捨てて去ることが出来なくなり、穴を掘って埋葬を始めます。

いつ果てるとも知れない、目を覆わんばかりの陰惨な重労働です。ある時、掘った穴の中から、これまで誰も見たこともないような、大きな珍しいルビーの原石が出てきます。
戦闘に倒れた兵士の流す血のように、深い真紅の色。それはまるで、多くの兵士の魂が凝縮したかのような、怪しくも美しい色を湛えています。このルビーを見つけた時から、水島はビルマの地に呪縛されてしまったのでしょうか。
水島がいつも肩に乗せて飼っていたインコは、水島の口真似をします。「アア、ヤッパリジブンハ、カエルワケニハイカナイ」
そのインコは、手紙と共に、帰国する小隊の仲間の元へと届けられたのでした。

筆者が始めてこの映画を見た時は白黒でしたが、画面が白黒でも、小説で読んでも、森の緑、漆黒の土、青いインコ、白骨の白、その中にルビーの真紅が色鮮やかに浮かび上がる、とてもカラフルな印象を残す作品でした。
ルビーの主な産地は東南アジアに限定されますが、中でもビルマのルビーはピジョン・ブラッド(鳩の血)と呼ばれる、紫がかった鮮やかな赤で、高級品とされるそうです。
赤は最も彩度の高い色ですが、それだけに非常に多くの色味と表情を持っています。この作品にも、ルビーの色彩が更に強い印象を添えています。


首飾り(ダイヤモンド)

優れた短編小説のお手本としてよく引き合いに出される、モーパッサンの作品です。
ヒロインのマチルドは、下級官吏の妻として、つつましい生活を送っています。しかし美貌のマチルドには自分なりのプライドがあり、現在の生活には満足していませんでした。
ある時、夫が苦労して舞踏会の招待状を手に入れてきます。

ここで、女性ならばよく分かると思いますが、マチルドもまず、舞踏会は嬉しいけれど、何を着て行こうか、という悩みが、真っ先に頭に浮かびます。夫と相談の上、貧しい中にも苦心して、何とかドレスだけは準備しますが、それだけでは装いは完成しません。胸元を飾るアクセサリーがなければ、舞踏会に相応しいドレスアップとは言えません。
マチルドには、フォレスチエ夫人という裕福な友人が居たので、彼女に宝石を借りることを思いつき、素晴らしく美しいダイヤの首飾りを借りて、舞踏会に出かけます。

ここまでは良かったのですが、楽しい一夜を過ごして家に帰ってくると、借りものの大切なダイヤの首飾りを紛失してしまったことに気付きます。顔色を変えても後の祭り。夫妻は無くした首飾りとそっくりなダイヤを宝石店から探し出し、苦心惨憺して買い求めた上で、黙ってフォレスチエ夫人に返しに行きます。
この為に巨額の借金をしてしまった二人は、身を粉にして働き、10年かかってやっと借金を返し終わります。しかし、過酷な生活の為に、若く美しかったマチルドは、見る影もなくやつれて老けこんでしまいました。

ある日、道でバッタリとフォレスチエ夫人に出逢ったマチルドは、気の緩みからつい、首飾りの返済の為に借金をしたことを、打ち明けます。それを聞いたフォレスチエ夫人の反応は、マチルドにとって余りに皮肉なものでした。
「まあ、あの首飾りは模造品だったのに!」


幸福の王子(サファイア)

オスカー・ワイルドは不思議な作家です。この作品はいちおう童話集に入っていますが、子供向けの童話かどうかはちょっと疑問があります。もともと、童話というジャンルを子供向けの理解しやすい易しい話、と解釈するのは疑問があります。
童話には残酷な話や風刺の強いものも多いですし、民話なども子供の頃に聞かされていて、大人になってからハッと気付くことも多いですよね。

幸福の王子とは、ある町の中心に立っている像で、とても立派なものでした。全身が純金で被われ、腰に差した剣の塚にはルビーが入っていて、双眸は輝くサファイヤで出来ています。全身が宝石、貴金属です。
お話のほとんどは、この王子の像と、そこをねぐらにするツバメとの間の出来事です。
王子は、町の貧しい家の暮らしぶりを高い場所から見ていて悲しんでいたので、ツバメに頼んで自らの体についている装飾品や金を、あちこちに運んで行ってもらいます。ツバメも最初はめんどくさがったものの、乗りかかった船、頼みを断ることが出来なくなります。
毎日この施しの手伝いをしているうちに、ツバメは南の国に旅立つのが遅れてしまい、季節はとうとう冬になります。

度重なる施しの結果、王子の姿はみすぼらしくなり、価値が無くなってしまったので、柱の上からひきずり下ろされ、廃棄処分になります。ツバメも凍死してしまい、王子の足元に落ちてつめたいむくろとなってしまいます。

この王子の施しの中で、一番重点が置かれているのが、サファイアの目です。ワイルドはアイルランドの作家なので、王子の目も青ということで、サファイアになったものでしょう。王子が目を失うことによって、ツバメが王子を捨てて行けなくなり、結局は一緒に犠牲になってしまうことになります。

筆者はこの「幸福の王子」の本を、わりに幼い頃に読みましたが、登場人物の気持ちや立場がとてもよく分かるものの、少し複雑な気持ちになりました。良いことをして自分は犠牲になったけど、それでも幸福なのだ、という解釈は、いちおう分かるのですが、何となくそれだけでは、片付かないような気がしないでもありません。
今は少し違う考え方を持っているので、この疑問の正体にも自分なりのヒントを持っていますが、結局はこの話は、青い目の人(像)が施しをするというところが、西洋文明の価値観を象徴しているような気がします。自分が年齢と人生経験を経て、この作品がどう心に映るか、何となく興味深い気もします。


ブルーダイヤモンド

小説ではなく、実在する有名な宝石の話です。いわゆる、フランス王家の呪いの宝石です。これはもともと、ヒンズー教寺院にあった女神の目に嵌められていた宝石が盗まれたもので、盗難に気付いた僧侶が呪いをかけた、という伝説があります。

ただし、持ち主に呪いあれ、といういわくとは関係なしに、最初の持ち主は長生きしたそうで、それがフランス王ルイ14世が購入した頃から、だんだんいわくつきのものになってゆきます。

ルイ14世の治めるフランスはだんだん衰退し、ルイ15世は天然痘で死亡、その次のルイ16世と王妃マリー・アントワネットが処刑された頃から、俄然この宝石には血なまぐさい因縁がつきまとうようになります。
マリー・アントワネットの後にも、窃盗団やら宝石商やらがかかわり、それらが皆、不慮の死を遂げたということになっていますが、どこまでが本当やら分かりません。現在では博物館に保存されているということです。
この宝石に関してはいろいろ尾ヒレがついたり、違うバージョンの伝説もあるようですが、大筋ではフランス王室の歴史を共にしているだけだとも考えられます。しかし別の見方では、宝石をパワーストーンと考えるならば、ヒンズー僧の呪いを信じないまでも、長いフランス王室の怒涛の歴史の中で、何らかの悪縁起が染み付いた、と思えないことはありません。
いや、ダイヤモンドなんて単なる炭素だ、と言ってしまえば確かにそうなのですが、そこまで科学が全能だとも思えませんし、第一それでは面白くないので(笑)、こういうエピソードはそれはそれとして楽しむことにしましょう。


まだまだ、宝石にまつわるエピソードはありますが、こういう欲と執着の絡む悲惨な話に登場する宝石の多くは、ダイヤモンドです。
次の章で、いろんな宝石の持つ性質や意味を見てみましょう。

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