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方位と地図のまとめ・上級篇


地図と方位のことが少し分かってきたあなたは、もう少し地図学のことを勉強してみましょう。そして、風水学に残された今後の課題についても、考えてみると面白いでしょう。


投影法のいろいろ

前章までは、地図の種類を、使い方から考えて2種類に分類しました。
今回は技法の面から考えてみますと、地図はだいたい投影法により、3種に分類されるといって良いでしょう。
代表的な3種の投影法とその特徴、それによって作成した地図を次に示しました。
他にも2つの投影法を取り入れた「擬図法」がありますが、今回は取り上げません。

このように、だんだんと地理・地図のことにまで踏み込むことにより、世界の地理的な条件、気候や暮らしにまで考えが及び、風水学も一味違ったものになるかもしれません。

1、円筒図法グループ:経線と緯線は直角になるが、北極、南極近くの距離と面積は大きく伸びる。

2、方位図法グループ:方位は正しいが、中心から離れるほど形状がひずむ。

3、円錐図法グループ:面積や角度のひずみは最も小さいが、地球の半分程度しか投影できない


円筒図法と投影図
円筒図法 円筒図法の投影図


方位図法と投影図
方位図法 方位図法の投影図


円錐図法と投影図
円錐図法 円錐図法の投影図


上記の三種の図法も、投影面を地表に接触させる方法、あるいは地表から少し下げる(地下に潜り込ませる)方法があります。これはひずみを少しでも少なくするためです。方位に直接の関係はありませんが、参考までに一種類だけ図示しました。
地表に接触させる方法を接図法、地表下に下げる方法を割図法といいます。

 

接円筒図法(左)と割円筒図法(右)
接円筒図法・割円筒図法


軸と経緯線の形状

更に、軸の設定のしかたによる投影法の違いを述べます。3種類あります。

軸の問題を、作図上の観点から、もう少し詳しくみてみましょう。
問題になるのは、極地(南極と北極)と赤道上以外の地点から、各地への方位を見る場合です。
ある場所を中心に設定するということは、投影面と軸の角度をどう決めるか、という問題につながります。
地球の中心軸に対して、投影面をどう設定するか、これには3種類の方法があります。


1、正軸法=投影面の軸と地軸が一致するのが「正軸法」です。一番多く使われます。わかりやすくいうと、北極と南極を真っ直ぐにして中心に据えているわけですから、当然、軸は真っすぐになります。(偏差角の問題は別章に回します)

2、横軸法=投影面の軸と赤道が一致する図法です。赤道に沿った地域ではひずみが小さくなります。これは赤道を中心にしているので、赤道上のどこを中心にしても軸は真横になります。

3、斜軸法=投影面の軸が赤道、北極、南極いずれにも一致しない図法です。北極、南極、赤道以外の場所を中心にして正確な距離と方位を測定したい時に、この方法を使います。コンピュータを使わずに作成するのは、非常に困難な図法です。
日本は北極、南極、赤道上にはないので、この斜軸法で出力した方位地図を使わなければ、正しい方位は分からないわけです。

参考までに、投影軸の違いによって、経線と緯線がどんな形状になるかを示しました。

正軸法で描いた経線・緯線
正軸法 正軸法の経緯線

横軸法で描いた経線・緯線
横軸法 横軸法の経緯線

斜軸法で描いた経線・緯線
斜軸法 斜軸法の経緯線

※捕捉:厳密にいえば、方位の正しい地図にも二種類の作成のしかたがあります。
一つは、ある一点からすべての地点への方位が正しい地図
もう一つはA点からB点を見たときの方位と最短距離が正しい地図です。

これは地図の縮尺と、計測する場所の緯度、経度によって、どの方法を取るか決定するのが本当なのですが、そこまで判断するのは専門家でなければ、なかなか困難なことです。
私たちが地図を作成する時には、出発点と目的地をカバーする適度な縮尺で、いわゆる方位図法といわれるものを使えば大丈夫でしょう。
注意点として、なるべく、必要以上に広い範囲を投影しないようにしたほうが、正しい結果が得られます。


方位の定義を知る

いろいろ勉強してきたところで、方位の定義をしっかりと頭に入れておきましょう。定義ですので、これ以上詳しくも簡単にもできませんが、次のようになります。

★方位角とは、地球上でA点からみたB点の方向を表わす角度です。A点とB点を結ぶ「大圏コース」が、A点を通る経線と交わる角度のことをいいます。北を0度として時計周りに計ります。
A点を中心にした方位図法では、すべての方位を直線で表すことができます。
ここで注意してほしいのは、赤道上以外ではA点とB点が同じ緯度でも方位角は90度あるいは270度にはならない点です。

もう少し、噛み砕いて説明してみましょう。
例えば、A点からB点への方位を見る場合です。前提として、「A点を中心とした方位の正しい地図」が手元にあるものとします。方位の正しい地図は、見慣れたメルカトル地図とはずいぶん形が違いますね。
この例では、東京を中心としてニューヨーク付近への方位を見てみます。

1、まず最初に、基準となる「A点を通る経線」(青で表示)を確認しておきます。これは北極〜A点〜南極を結ぶ縦線で、直線になります。

2、次に、「A点からB点への地球の表面を通る最短距離」を探します。(これが大圏=青線で表示)これも方位地図では直線です。

3、最後に、その最短距離ルート(作図上は直線になります)が、A点(起点となる場所)を通る経線に対して、何度の角度になるかを調べます。時計回りに図ります。これが方位(方位角)です。

上の東京〜ニューヨークではだいたい45〜6度で、下の「ロスアンゼルス〜東京」では約312度になりました。
気学による方位の区切りでは、東京〜ニューヨークは北東、ロスアンゼルス〜東京では北西となりますが、この問題は最後に述べます。ここでは、地理学の定義と正確な方位角を知るのが目的です。

以上が科学的な「方位の定義」です。よく確認して下さい。
蛇足ですが、「科学的」という意味は、「この定義の通りにすれば、誰が何回その計測を繰返しても、同じ結果が得られること」を言います。占いだからといって、カンや思想などによって方位が変わるわけではありません。

飛行機の運行の方位も、すべてこの方法によって定められています。
もう一度言いますと、メルカトル図法の地図のように、緯線、経線とも直線に引き伸ばしてしまうと、北極、南極に近づくほど面積と距離のひずみが大きくなります。
方位角とは最短距離ルートと密接な関係がある、ということを思い出してください。
距離が正確でない以上、方位にもひずみが出てしまいます。

以上、少し複雑だったかもしれませんが、次の点を整理してください。

1、方位を見るためには、地図学の定義をはずさない。

2、地図には、用途によって何十種類もの作成法があり、目的にあった地図でなければ正しい結果を得られない。

3、ある地点からある地点への方位を見るには、必ず「その地点を中心にした方位の正しい地図」を作成しなければならない。

4、「方位の正しい地図」とは最短距離ルート地図と一致する。


特註1・行きと帰りの方位

出発点と到着点では方位が違うことがあります。これは、出発点と到着点の緯度、経度が違うためです。例えば、東京から福岡を見るとほぼ西ですが、福岡から東京を見ると、完全に北東になります。


特註2・磁石の北と真の北

この章では触れていませんが、磁石の北と実際の北とは完全には一致しません。地軸と北極点が少しずれているためです。
明石で約6度、時計回りに修正しますが、場所によって修正する角度は違ってきます。これを「偏差角」(偏角)といいます。この点については、「磁石と地図の基礎知識」(方位地図ライブラリ)を参照してください。

※ただし、市販の地図は既に修正済みですので、北の印のあるほうが、実際の北です。

※また、磁石は作られた場所によって、「伏角」というものがあり、作った場所と違う場所で使いますと、ほとんどの場合、針が水平になりません。ですから、日本で使う場合は日本製品をお勧めします。


風水学と地図学の問題

最後に、風水や気学の方位を見るために、最も大切なことを述べます。
以上の地図学上の解説は、ある地点からある地点への方位を定める場合に、「○度」という正確な決定をする為のものです。これは、飛行機の運行には利用できますが、「○度」というのが、風水や気学で言う北に入るのか、北東に入るのか、吉方位なのか凶方位なのか、という問題とはまた別ものです。

じつは筆者は、風水や気学の方位を定めるのは、地球上では限界があると思っています。
例えば、日本からブラジルとかアフリカ大陸、アメリカ東海岸からヨーロッパぐらいの遠距離で、方位地図に分界線を引いて東とか北東と定めて吉凶判断するのが果たして正しいのか、疑問を感じる方はいらっしゃらないでしょうか。

東に行ったつもりでも、ぐるっと回れば西ですし、北半球では北に行くほど寒くなるのに、南半球では赤道までは北に行くほど暖かくなります。これでは風水や気学の概念というものは、意味をなさなくなってしまいます。
よく知られているように、北極点近くでは磁石は役に立たなくなりますが、こんな場所で風水でいう坎宮(北)とはいったいどこでしょう?

ただし、風水も気学も、成立した時点での認識が永久に通用するものであり、それは宗教である、とされる向きは、このサイトの記述を気になさる必要はないと思います。

現在のところ、中国で生まれた陰陽五行八卦というものは、あくまでも北半球の温帯地方を中心にして、方位の判断のできる範囲も、地球の半分程度に留めておく方が安全、という立場を取っています。
具体的には、方位の判断ができるのは極圏あるいは南北回帰線までを限界としています。

この点については、インターネット上で公開している風水サイトにとっては甚だ残念ですが、世界各地で生活していらっしゃる方の情報も期待したいところです。

投影法などについては「世界地図作成ソフト・Ptolemy」(世界地図を作ろう)のサイトで詳しく述べられています。
地図ギャラリー、地図関連サイトのリンク集もありますので、一度覗いてみてください。

方位と地図のまとめ・ビギナー篇 中級篇にいく

(2000年頃記述)
2009年11月改訂・3章に分割

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