最近、私もAIにはまってしまい、何かというと、ChatGPTだのGoogle Geminiだののお世話になっています。しかし、AIがあるからといって、人間の行動がそんなに急に変わる訳でもないでしょう。 文章をまとめるにも、事務的なものなら確かに、AIでまとめてしまえば手っ取り早いでしょうが、面白く読んでもらい、かつ自分なりの味わいを残したいと思えば、AIに丸投げなんてことは無い筈です。だから結局は使いかたしだい、使う人間の能力しだいという、ありきたりな結論になってしまいます。
ただし、AIの出現で大きく違ってきたものがあり、それはイラストの生成です。 昔のようにテキスト主体で終始するなら、ちょっとした挿絵ていどで済んだものが、最近はビジュアルに頼る比重が大きくなりました。私自身も、何かの情報のまとめなどは、ついつい動画の流し見で済ましてしまいます。
私もまだまだ、画像の出力は不慣れで、思うような画像を手に入れるには、少し手間取ってはいますが、数年前と比べると、画像の入手はずいぶん楽になりました。
AIを使うようになって、更に画像のバリエーションが増えた感がありますが、その中でも時々話題に上る、一連のイラストがあります。たぶん皆さんも、必ずどこかで目にしたことがある筈の、「いらすとや」の画像です。 一見、可愛い系のイラストなのですが、あれはけっこう独特の特徴というかクセがあり、私はなるべく使用しないようにしています。
世間では、いらすとやが流行るのは、シンプルなデザインでバリエーションが多く、汎用性が高い、無料で商用利用も可能だから、ということになっているようです。 この中で一番大きな理由は「無料」という理由なのは間違いないでしょうが、実際はシンプルとは正反対の、非常にアクの強いイラスト世界です。一枚でもこのいらすとやの画像が入ってくると、自己主張と存在感が強すぎて、全く他の画像を受け入れることが出来ない雰囲気になってしまいます。
まあ、イラストでも他の絵画でも、みんなそれぞれの世界を持っているので、汎用性とか親和性の高いものなんて、探すのは難しいと思うのですが、この「いらすとや」の画像は、無料であるが故に、目を覆わんばかりに世の中にはびこっています。
更に最近は、AIにいらすとやの画像を学習させ、「これと似たテイストで、これこれこういう画像を作って下さい」と指示すると、いとも簡単に出来てしまいます。そのため、更に数が増えてしまい、どれが本家からダウンロードしたものか、或いはAIで生成したものか、見分けづらくなってきました。 某掲示板でも「いらすとやの闇深い画像を貼ってけ」なんてトピが立つぐらいで、あれは汎用性と可愛さの皮を被った、アングラ芸術の極致と言っても良いぐらいの、独特なシロモノではないでしょうか。
近年はそんな画像が、いたるところで、まさに街の津々浦々、デスクトップの広告や役所の告知ポスターに至るまで、つぶらなオメメと短い脚で、一見無害そうな振りをしつつ、まるでネズミかGのように、世界を侵食してしまっています。 世間一般がどれだけ騙されやすいか、「無料」の罠に対して無警戒なのか、分かろうというものです。いや、分かって使えばあんな面白いものは無いので、ちょっとした小噺なんかにはもってこいなのですが、役所のポスターにまで、「これなら誰にでも分かりやすくていいでしょ!」とばかりに使われていると、何とも言えない複雑な気持ちになってしまいます。
私はホラー小説や映画が大好きなのですが、鈴木光司のリングシリーズは大変に面白く読みました。また、新作の「ユビキタス」も面白かったです。 「リング」シリーズの「らせん」は、人間の存在そのものを揺るがし、その在り方や進化から滅亡の可能性までを暗示する、非常に深遠なテーマです。今回の「ユビキタス」も、それに通ずるものがあって、ちょっとゾワゾワする内容でした。
デジタル音痴ならいざ知らず、ネット漬けの生活を送っていると、あの「いらすとや」の日常生活への浸透のしかたは、このホラー的なゾワゾワに通ずるものがあり、見て見ぬ振りをしていても、ちょっと食傷気味になる時があります。 私はそれほど気にせずにいますが、感覚の鋭敏な人なんかは、かなりのアレルギー症状に悩まされる場合もあるのではないでしょうか。少なくとも、「いらすとミーム」と言うに相応しいレベルには、確実に達しています。それも「黒いいらすとミーム」なのです。
youtubeの中には幾つかの勢力というか世界観が出来ていて、例えば「ゆっくり系」なんかが有名ですが、「いらすとや」も一つの立派な勢力圏となっています。 これらの世界は、混合して使われる場合も多いですが、一見無害、二度見で「またか…」、三度見で「世界侵略されてるのでは…」と思わざるを得ないのが、この「いらすとや」なのです。 ChatGPTで同じテイストの画像を自由に生成すれば、使用料(※)の心配もなく、誰かとかぶる心配もなくなりましたが、簡単に自分で生成できるようになったお蔭で、これら侵略者の翳が、更に大きく被さってくるような気もするのです。
※いらすとやは原則無料ですが、1作品の中で20点以上使うと、途端に使用したもの全てに使用料がかかって来るので、かなり高額の使用料が必要になります。
あまりyoutubeを見ない方や、いろんなキャラクターのことを全く知らない人にとっては、この話は何のことやらサッパリ分からないでしょうから、少し紹介しておこうと思い、今回の話に出て来る、いろんなキャラクター群の集合写真を、AIで出力しようと試みました。 そしたら、著作権、商標権ナンチャラの問題で出来ません、と断られてしまったのです。しかし、それらの実物を読み込ませて「これと同じテイストで作って」と指示すれば、いとも簡単に出来てしまうので、これはどう考えればいいのでしょう。 まあ、色・形という抽象的なものには著作権は無いが、言葉で「誰々のもの」と名付けてしまうと、そこに商標権が発生する、ということなのでしょうか。
AIの回答:申し訳ありませんが、それらのキャラクターは著作権・商標の対象となる可能性があり、そのまま描くことはできません。もしよければ、「〇〇」風に寄せたオリジナル人物やキャラとして、雰囲気や構図だけ再現する画像を作ることは可能です。
筆者は社会に出た一番最初の業界が服飾の世界だったので、商標権はともかく、ビジュアル世界での著作権とかパクリなんて認識は、全く頭の中に存在しません。 服飾デザインなんて、パリコレで発表したデザインが、数日後には早速真似されて、全く同じデザインの服が、街中をゾロゾロ闊歩しているという業界です。だから、ビジュアルな制作物に、著作権なんて概念は、存在しないも同然なのです。
しかし、これら著作権・商標権の問題とは別の次元で、様々な作者の描くイラストが至るところに溢れている以上、それらが潜在的に持つ毒からも逃れられないのでしょう。一例として、いらすとやの中でも比較的に分かりやすい、毒を含んだ作品を紹介しておきます。 一番上の「貧乏家族」と名付けた画像なんて、本当によく見かけるんですが、みんな「ほのぼの系だから大丈夫」、とでも思って使うんでしょうか。よくこんな毒の強い画像を唐突に、自分の動画の中に使えるなーと、いつもその鈍感さに感心してしまいます。 いらすとやの作品は、強いテーマを持った作品に合致することはあっても、ちょっとした公的な告知なんかに、安易に使えるようなものでは無いと思うんですけどね。
みなさん、仕事の効率化とか新しいチャレンジにご興味がありましたら、どんどんChatGPTとかGoole Gemini~NotebookLMなんか、使ってみて下さい。でもAIでも、うっかりすると、その世界に独特の「毒」を秘めているかもしれませんよ。まあAIは、犬が飼い主に似るのと、同じようなものかもしれませんけどね。
|