映画の話など


子供版サイキック戦争の行方は!?~イノセンツ~
私はサイキックバトルなぞという題材は、筒井康隆の七瀬シリーズが素晴らし過ぎて、もう他の作品を受け付ける気になれず、全く手を出していなかった。他の作品はおろか、原作の面白さを穢すのが嫌で、七瀬シリーズの映像化も全く見ていない。

この映画は、内容を知らなかった為に、単にホラー映画と思って見たのだが、私にしては、これまで全くしたことのない行動を取ってしまった。
余りに怖くて、途中から続きを見るのがしんどくなってしまい、ネタバレを読んで少し安心してからやっと、続きを見たのだ。なぜそんなに怖かったのか?たぶんこれは、登場人物が子供の為、その無力さと展開の予測しづらさから、怖さが倍増してしまったのかもしれない。

内容は子供たちのひと夏の冒険…じゃなくて命がけの心霊戦争。
主人公はスウェーデンの郊外団地に引っ越してきたばかりの、9歳の女の子イーダ。両親と姉の四人家族なのだが、姉のアナが強度の自閉症の為、両親の関心が姉に集中してしまい、イーダはやや愛情不足と寂しさを感じている。
その為、嫉妬心から、両親の目の届かないところで、反応の薄いアナの手足をつねったり、ガラスの破片を靴に入れて怪我させたりという、意地悪さを発揮する時がある。それでも基本は、次女らしい物おじしないやんちゃっぷりと明るさで、日々を楽しんではいる。
そんなイーダに、ベンという男の子の遊び友達が出来るのだが、このベンは念動力を持ち、イーダにその片鱗を見せて子供らしい自慢をする。他にも、アイシャという人の心を読む能力を持つ同年代の女の子と知り合い、計4人の子供グループが出来上がる。
ところが、この4人がそれぞれに違うタイプの超能力を持っており、しかも4人集まることで、その能力をどんどん強めあう結果となってきた為、そこに思わぬ波乱が生まれる。お互いに性格や環境の違いもあり、特にシングルマザーのネグレクトによる強い不満を抱えたベンは、念動力も強まる一方、その残虐性もはっきりと表面に出てくるのだ。

このあたりの描写が進む中で、猫好きの方にとってはかなりヤバいシーンも出てくるので、これが我慢できない猫好きは鑑賞を控えていただいたほうが良いかもしれない。しかしこれは、明らかに必要な描写ではある。

全体に、静かな緊迫感が途切れない丁寧な作りで、派手さは無いのに飽きさせない作品だ。筆者は特にラストで、覚悟の頂上決戦に赴くイーダが、名残惜しさと孤独感を滲ませながらも抑え気味にママにすがり着き、また全てが終わってから今度は大泣きで、思いっきりママに抱き着いて甘える描写が、子供らしくて大好きだった。
猫問題以外は、かなりおススメのタイトル。
Date: 2025/12/14
【映画の話など】


DOGMAN~ドッグマン~
もう5回目ぐらいになるが、また「DOGMAN ドッグマン」を見た。
映画でも小説でも音楽でも、初見でとても面白かったのに、どういうわけか、初見で終わりになってしまうケースがある。
それとは逆に、初見ではそれほど強い印象を受けたわけでもないのに、後から何となく思い出して、ジワジワくるのでまた見返したくなる作品もある。

この「DOGMAN ドッグマン」は上記のどちらでもなく、初見のインパクトも強烈ながら、それがずっと衰えずに、しばらく経つとまた見たくなってしまうという、珍しいタイプの映画だった。

世評も高いので、特に解説する必要もないとは思うが、リュック・ベッソン恐るべし。私は彼の作品はそれほど好きなほうではないのだが、このタイトルはこれまで見た中で一番没入した映画だった。考えてみれば、この作品以外にリュック・ベッソン監督作品で好きなタイトルは思い当たらない。そもそも、あまり見ようとも思わないので、大きなことは言えないのだが。

なんだか、褒めてるのかけなしてるのか分からない映画評だが、若い頃の作品は芸術性がトンガリすぎてて合わない気がしてたのが、彼が年取って丸くなり、ちょうど良くなったのかも。

この映画で特筆すべきは、やはり主役のケイレブ・ランドリー-ジョーンズの鬼気迫る演技だろう。普通なら人格破戒されているような状況で、危うく紙一重で善の側に踏みとどまっているような、抑えに抑えたキャラクター構築が、見事に決まっている。

映画全体が、かなり極端な状況設定なのに、押しつけがましさも感じさせないし、終わり方もサラッとしている。
脇役陣の配置もさり気なくよかったし、ドラァグクイーン達の挿入も、エンタメ性を爆増していて大成功。エディット・ピアフの曲をケイレブが歌うシーンだけでも、ほんとに儲けもの!という感じだ。今どきおススメするには少し遅い話題だが、思い出した序でに。
Date: 2025/11/29
【映画の話など】


マニブスの種~なんかよく分かんない映画~
アマゾンプライムで、たまたま表示されたので何となく見ていて、これって面白いのか面白くないのか?怖いのか怖くないのか?変なのかそうでもないのか?
何だかよく分からない展開なのだが、何となく印象に残ってしまった邦画をご紹介。

平凡なショボい独身サラリーマン男性の元に、差出人不明の植物の種らしきものが送られてくる。
これは3~4年前だったか、世界各地で話題になっていた、謎の種子が送り付けられて来た事件を彷彿とさせるので、何かサスペンス的なハラハラ展開でもあるのかと、少し期待しながら見ていた。
そしたらこの映画…映画というには23分ほどの小品なのだが、ことごとく予想を裏切る展開で、「え?そう来るか?」と意外と退屈しなかったのだ。

男性は丁寧に植木鉢を用意して、その種を撒き、水をやったりして部屋の中に置いている。
ここでまず、(こんなワケワカメの種植えたりするか?)とみんな思うだろう。

そしたらその種が芽を出すのはいいのだが、何と真っ黒い不気味な手が生えてくる。

そこで、(ああ、これはホラー的な展開になるのか)と思う。
男性も普通の反応として、動く手がおどろおどろしくて不気味なので、パニックになり、カッターで切りつける。

そしたら血が飛び散るのだが、ここからまた予想に反して、「…なんか、ゴメン」とか軽く謝りながら、バンドエイドかなんかをその手に貼ってやってる。オイオイ、ホラーじゃないのかよ。

次に、手がモゴモゴ動くので、なんか言いたそうだね…と、どうするのかと思ったら、スマホを与えて、手は文字通りのブラインドタッチで送信してきて、二人は会話を始める。
一人と一本は妙に仲良くなって、職場でもデートの最中でも、スマホで頻繁にやり取りしている。

いくらブラインドタッチたって、どうやって返信内容を理解するんだよ?とか、部屋に連れ込んだ彼女が、怖がりもせずにまたその手とスマホでやり取り始めるとか…。
イタしてる最中に手が見ていても気にならないのか?更に手に見られるというのは、正しい表現なのか?とか…
とにかくこの作品、こうなったらこうなる、という、ありきたりの展開をことごとく裏切り、ほとんど予想の逆を行くのだ。

そして結局は、心温まるのか不気味なのか、よく分からないラストとなるのだが、私はこの映画を見ていて、何故かChatGPTを思い出してしまった。
唐突に生活に侵入してきて、アッという間に人の一番奥深い部分まで簡単に入り込んでしまい、役立ってるようで何とはなしの不気味さもあるという…。
すっかりネタバレしちゃったけど、アマプラ無料・23分と短いので、期待せずに見てみてもいいと思う。
Date: 2025/11/05
【映画の話など】


女殺し油地獄と黒沢映画の疑問
買い物の序でにamazon primeでふと目についた「女殺し油地獄」。
近松原作ということとタイトルだけは知ってはいたが、未見だったので、何となく見てみた。

映画そのものは、それほど面白いとは思えないのだが、有名な歌舞伎俳優が出ているので、その演技力とか存在感を感じ取れて、なかなかのめっけもの。
やはり、舞台で鍛えた役者の立ち居振る舞いは、もうほんとに見事としか言いようがなく、かつての日本の古典芸能界の底力を、目の当たりにする思いである。

特に、新珠三千代のあざやかなセリフ回しや所作は際立っていて、こんなに凄い役者だったのかと、昨今のテレビドラマではまず感じられない見事さだった。
ほんとに、「子供たち、お茶が飲みたいの?そこに座りなさい」なんていう、何気ないひとことでも、上手な役者が言うとこんなに引き込まれるのかと、つくづく見入ってしまう。


◆黒沢映画のセリフって…
セリフの見事さを考えていて、逆の意味で思い出したのだが、私は黒沢映画をほとんど見ない。
とても面白い、との評判なので、何度か見てみようとするのだが、どうもピンとこなくて、めったにやらない途中放棄、脱落をしてしまう。
とにかく、何を言ってるのか分からない。今風に言うと活舌(滑舌?かつぜつ?)が悪すぎて、筋も何もかもあやふやで、ついてゆけないのだ。

何で黒沢映画って海外で評判いいの?と考えてみて、もしかしたら、向こうは字幕か吹き替えで見るので、よく聞き取れない日本語で見るよりも面白いのかもしれない、と思った。
この件でネット検索してみたら、似たような感想を持つ人がゾロゾロ出てきて、やっぱりそうなのかもしれない、と思う。
黒沢映画はスタジオではなくロケで撮るので、セリフの音質が悪いとか、その時代の録音機器が良くないのかとか、いろいろ考えてみるのだが、残念ながらいまだに私には、黒沢映画の面白さを味わうことが出来ないでいる。
日本映画だから大丈夫な筈、という思い込みを捨てて、字幕のついたものでも見たほうが良いのかもしれない。


◆縁起担ぎ?
この女殺し油地獄で、一つだけ妙に気になったことがあった。
新珠三千代扮するお吉が、亭主が出かける時に、「息つぎに一杯だけぐっとやってからお出かけなさいな」と冷酒を湯呑に注いで薦める。
慌ただしく外出の準備をしている最中なので、そのまま後ろを向いて用をしているのだが、振り向くと亭主は立ったままで、湯呑から酒をすすっている。

それを見たお吉
「何してはんの!立ったままお酒飲んだりして、…縁起の悪いー!」
と普段柔らかい物言いのお吉が、こめかみに青筋立てる勢いで強く咎める。
亭主のほうも、
「ああそやったな、せいてたからな、つい気のきかんことしてしもうた、すまんすまん」
と謝っている。

私はこれを見て、普段あんまり聞かない話だったので、へえーと思った。
立ったままで飲むのは確かに行儀の良いものではないが、立ったままでお酒を飲むのが良くないのか?それともお酒に限らず、立ったままで飲むのが良くないのか?それとも、出しなに急いで立ったまま飲むという状況が縁起が悪いのか、余りにはっきりと「縁起が悪い」と強く咎めた光景が、強く印象に残った。

もちろん、立ち飲みの居酒屋だったら、立ったまま飲むのが普通なので、そういうことも無いのだろうが、この後の事件とも繋がる縁起担ぎという点で、非常に印象に残ったシーンだった。
何かご存知の方がおられたら、是非教えていただきたいと思う。

前述の通り、映画のストーリーなどはそんなに面白い映画では無いのだが、とにかく役者が見事なので、一見の価値ある映画である。

1957年版:女殺し油地獄
監督 堀川弘通
脚本 橋本忍
東宝制作
Date: 2025/09/24
【映画の話など】


デッドゾーンが現実だったら?
年々、夏の暑苦しさがひどくなり、今年も「忍の一字」という感じの日々ですね。
コロナ禍が一段落ついたかと思いきや、アメリカ&中国という大国が浮足立っているので、日本での生活は、他国よりはたぶん、だいぶマシなのかな?と思って過ごすしかない状況です。

アメリカも第二次トランプ政権がスタートしてから半年を過ぎ、日米関係という大船に乗った積りでいたものが、どんどんおかしな事になってきています。
筆者は、前はトランプ贔屓だったので、第二次も期待していたのですが、さすがにちょっと不安を感じざるを得ず、これはたぶん、似たような方が多いのではないでしょうか。
個人的には、ひょっとしたらアルツハイマーではないのか?という懸念もあり、あるネット記事で「最も危険な暴走老人になる可能性が…」なんていうのを見かけて、かなりイヤーな気分になりました。

そういう怖い印象を持ってしまった一因として、今回お話しするドラマの事があります。ドラマチックな話なのではなく、文字通りドラマなのですが、もしかしたら、この記事の写真を見て既に、分かる人には分かっているかも…

筆者はスティーブン・キングの大ファンなのですが、彼の作品の中でも、特に抜きんでた逸品と言えるものの一つに「デッドゾーン」があります。キング作品の映画化は、ある要素の為に意外に難しく、原作は良いのに映画は駄作、というものが多いのですが、このデッドゾーンは、映画ともども出来の良いものの一つと言えるでしょう。
1983年作、デヴィッド・クローネンバーグ監督、クリストファー・ウォーケン主演です。
せっかくの名作なので、余計なネタバレは控え、皆さん自分で見て読んで、楽しんで頂きたいのですが、やはり今回のテーマを理解して頂く為には、必要なぶんだけは解説せざるを得ません。

一番上の画像は、トランプ氏暗殺未遂事件の瞬間を見事に捉えた、まさに歴史的な報道写真です。私はこの写真を見た瞬間から、デッドゾーンのあるシーンと、この写真がピッタリ重なってしまい、どうしても切り離すことが出来なくなってしまいました。

デッドゾーンのストーリーは、ある若い男性が事故に遭い、5年もの昏睡状態を経て目覚めるところから始まります。5年の間には、婚約者も家族も離散し、自らの生きるよすがを見失ってしまった彼ですが、ある事件をきっかけに、自分が手を触れた相手の未来を、予知する能力を授かった事に気づきます。
その能力は、見たくないものを見てしまう事にも繋がり、人間関係をも壊し、彼を苦しめます。しかし、彼なりに社会に役立ててゆくことで、何とか自分の中で折り合いをつけようと努力します。ところがある日、仕事先で紹介された新進気鋭の政治家と握手した瞬間に、この政治家が、世界を滅亡へと追い込む危険思想を持っていることを見抜いてしまうのです。

そこで彼は、悩んだ結果、ある行動に出ることを決意します。これがラストの悲劇へと繋がるのですが、クリストファー・ウォーケン演じる主人公と、マーティン・シーン演じる、カリスマ政治家のキャラクターともうまくマッチして、哀愁と悲壮感の漂う、心を抉られるようなラストシーンになっています。

私はトランプ氏狙撃のあの写真を見た瞬間、この映画と完全にシーンが重なってしまいました。そこで、何度も再生し直して、構図の似たシーンを探したのですが、構図に関しては、私の頭の中で合成されたものだったようです。
2枚目が野外選挙活動の様子、3~4枚目が悲劇の現場、5枚目は彼が命を懸けて守った未来でした。ストーリーと言い、役柄と言い、うわー、もう、はまりすぎーい!と、叫ばずにはいられませんでした。

マーティン・シーン、けっこう悪役似合いますね。それも単純な悪役ではなく、権力の座にありながら問題もあるという複雑さも出せて、もう凄いですよ。
そしてもちろん、クリストファー・ウォーケンの素晴らしさ!
彼の役者人生の中でも、屈指のはまり役なのではないでしょうか。(勝手にそういう事にしてしまいます。)あの神経質というか、繊細さと芯の強さを兼ね備えた独特の存在感は、他の追随を許しません。

しかしながら…、考えれば考えるほど、デッドゾーンがドラマでよかったわー……
だって、マーティン・シーンだけ居て、クリストファー・ウォーケンが居なかったら、世界はどうなっちゃうんでしょうねえ。
皆さん、是非とも見て下さいね。デヴィッド・クローネンバーグ監督の「デッドゾーン」ですよ。アマゾンプライムで、200円でレンタルしてます。
Date: 2025/08/01
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